【096】 墓   地
                                                                      

  物事には終焉があるし、 寿命がある。 草木は枯れていく。 空飛ぶ鳥すら地に降りて死す。 人間も例外ではなく、 死がやってくる。 
  人の住むところには墓地が必要になる。 住みなれた場所に墓を求める傾向がある。 
 

  日本人の場合は、 信仰心の強い人、 無信仰の人、 それら宗教に関係なく、 死後の居場所は墓地になる。 
  外国には、 遺体や遺骨にこだわらない民族もいる。 日本人は遺骨を大切にするし、 拘泥する。 
  下町には空地がほとんどない。 墓地はどのようにして作るのか。
  

  住民は3代、 4代つづく家系が多い。 郷里だの、 故郷だのとは無関係な人たちが多い。 遠く山地に墓地を求めることなどできない。  となると、 工場の跡地がマンション、 建売住宅地になったり、 墓地になったりする。 
  墓地の区画は密集した狭い場所だ。 大勢の故人が同居する。 墓の下から、 「生前は軒と軒をつき合わせて、 暮らしてきた仲だ。 下町育ちには狭くてちょうどいい」という声が聞こえてきそうだ。 
  下町の墓地は住宅地の中だけに、 うす暗さがない。 子どもに聞かせる幽霊物語すら、 どこか真実味がない。 
 

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