【036】 スポーツ少年
  東京湾の河口近くにも、 中流にも、 上流にも。 荒川には球戯場がいくつあるのだろうか。 
  右岸にも、 左岸にも、 グランドがある。 土日曜ともなると、 どこかしこで、 サッカーや野球のクラブ対校試合が行われている。

  夕暮れのチャイムが遠くから鳴りひびいた。 同時に、 グランドで笛が鳴った。 みんな張り詰めた緊張から開放された。 そして、  監督のまわりに集まり、 五分間の反省会があった。 

  タオルで上半身の汗をぬぐったら、 揃いのジャージーを着、 家路に向かう。 
  チームメートは上流に、 対戦チームは下流へと別れていく。 ボールを蹴り足りなかった者、 疲れきった者、 膝のケガで参加できなかった者。 さまざまだ。 
「お腹が空いたな」
「あんなチームに負けるなんて、 悔しいな」
「きょうはテレビで、 試合を見なくちゃ」
「これから、 塾なんだ」
「じゃあな」
「バイバイ」
 仲間の一人が土手を越えて帰っていく。 ぼくの家ももうすぐだ。 

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