槌音が早朝からひびいていた。 とび職がやぐらを組み立てていた。
下町の秋祭りがきょうから始まる。
槌音で呼ばれたかのように、 町会の世話役が集まってきた。 「きょう、 あしたは天気に恵まれそうだね」という挨拶が交わされた。 各班ごとに散っていく。 それぞれが分担された持ち場で働きはじめた。
神社の格納庫からは、 金箔が光る神輿がおごそかに取り出された。 子ども神輿だ。 テントまで運ばれた神輿は、 脚立の上にていねいに置かれた。
午後から、 二つの神輿が稚児たちとともに町内の路地をねり歩く。
本殿では、 背の高い男性が竹箒を手にして背伸びしながら、 天井や軒下をすす払いしている。 上向きの仕事は体力がいるものだ。 それぞれの顔には汗がにじみ出ている。
かれらは一通りの清掃が終わると、 こんどは純白の太いしめ飾りを取り付けはじめた。 すると、 神社全体に威厳が出てきた。
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