|  |  |  |  |  | 
    
      | 駅舎の階段を下りきると、 徒歩3、4歩。 ハイジャンプでもとどく場所に、 流行る精肉店がある。 夕方になると、 買い物客が少なくとも10人前後が並ぶ。 揚げたて「コロッケ」を買うために待っている。 店員3人ばかりが忙しげなく働くが、 客は途切れることがない。 商店街の周辺には呑み屋、 食べ物屋、 食堂など行列する店は多い。 「コロッケ」を売る店では、 ここが最右翼だろう。
 
 
 |  |  | 
    
      |  | 朝方はどこの店も準備中の札を吊るす。 精肉店の店員がヘルメットをかぶり、 店内から大鍋を運び出し、 原付バイクに積み込んでいた。 一言声をかけてから、 カメラを向けた。 「なにを撮るんだ? おれか?」
 店員は怪訝な表情だった。
 「違う。 鍋だよ」
 「これか」
 こんなものがめずらしいのか、 好きなように撮影しろ、 という態度だった。
 
 
 |  | 
    
      |  | 「ずいぶん大きい鍋だね。 どのくらい入るの? 何斗? 何キロ?」 「40キロだ」
 「お米?」
 「違う。 ジャガイモだ。 蒸すんだ」
 何もわかっていないな、 という表情で、 店員はこちらの顔をのぞき込んだ。
 (コロッケを売る店で、 ご飯は関係ないか)
 それは陳腐な質問だった。
 揚げたて「ジャガイモ」に行列ができる理由がわかった。 原料のひき肉は精肉店として、 お手のもの。 挽(ひ)きたてで、 変色しない新鮮な材料が使える。 ジャガイモは大鍋で丹念に蒸す。 手の込んだコロッケとなると、 流行るわけだ。
 |