| 【052】 ビルのリボン | 
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|  | 下町の街並みが変化しても、  まだ平屋建て、  二階建てが密集する。 突出したビルがあった。 見上げると、  ビルがリボンを結んでいた。 リボンでなく、  気取った蝶ネクタイなのか。 いろいろ想像が膨らむ。 ビルのショーウィンドーには数多くのおもちゃが展示されていた。 遠いむかしは小さなおもちゃ工場だった。 ブリキ玩具が流行ったころ、 一階が狭い工場、 二階が三世帯の住居だった。 そんな時代がながくつづいた。 父ちゃん、 母ちゃん,お婆ちゃんが手作業で、 細かな部品をつくっていた。 夜遅くまでも、 一つひとつ部品を組み立てる。 | |||
| 学校帰りの子どもも手伝う。 3ちゃん家業とか、  家内工業とかよばれた。 そのころは小さなおもちゃ工場が軒を連ねていた。 食事の団欒は、 家族全員で、 人形が器用に動く仕掛けを考えたり、 TV人気のキャラクター玩具を模造したり、 愛らしい縫いぐるみを考えたり。 共通する思いは、 世の子どもたちに夢を与えることだった。 おもちゃの業界は流行に敏感だ。 家内工業の弱さで、 いつまでも細々とした会社だった。 時の流れからも、 いつも取り残されていた。 それでも、 細々と玩具を作り続けきた。 回りには廃れたり、 登ったり。 消えた工場も多い。 ある日突然、 一つのおもちゃが大ヒット商品になった。 やがて、 日本中に名の知れた会社になった。 | ||||
| いまではロボット機械がおもちゃを作り出す。 そして、  下町に似合わない大きなビルを建てた。 青いリボンを結ぶことで、  子どもたちの想像を膨らませた。 大手になっても奢らず、 子どもに夢を与える創業精神は忘れてはいないつもり。 青空の下で、 リボンで飾られたビルが聳え立つ。 | ||||
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