【025】 仲 見 世
  仲見世は庶民の日常の買い物の場だ。 入口から手作りの味の店がならぶ。 あえて〈老舗〉と看板を出さずとも、 数十年来の伝統ある店舗ばかり。 大半が二代目、 三代目の店主なのだ。 

  野菜を路面にならべた八百屋。 老夫婦が朝から作った煮物を売る総菜屋。 三枚下ろし、 二枚下ろしと年季の入った包丁捌きの魚屋。 珍味食料品店。 こだわりの麺匠。 まさしく庶民の味の宝庫だ。 

  食品のみならず、 洋品店も軒を連ねる。 写真屋、 雑貨・袋物店、 小間物屋、 そして喫茶軽食だ。 店内に入れば、 トッコロテン、 三つ豆、 うどん、 中華そば、 カキ氷と品目が壁面に並ぶ。 となりが天ぷら屋。 薬局。 となりがガラス店。 どこの店舗も間口が五メートル以内だ。 

  陳列横でコロッケを揚売りする肉屋。 『ぜったいうまい豆腐、 どれでも一袋210円』の看板。 近くの店から、 手焼き煎餅の香ばしい匂いが漂う。 中年のおばさんがいつも焼いている。 斜め向かいの店は、 あんこが美味しい伝統のある人形焼。 焼きたてを紙箱に詰めてくれるので、 重宝なお土産にもなる。 


  夕暮れになると、 仲見世の一角には一杯飲み屋の赤提灯が下がる。 暖簾をくぐった旦那衆が円椅子に腰を据え、 コップ酒を飲みはじめる。 家族の手土産におでん屋に立ち寄れば、 女将が昆布、 玉子、 竹輪、 さつま揚げと一つずつ掬ってくれる。 この店は確か三代目だ。 

  仲見世の店は統一もなく順不同で雑然と並んでいるようでも、 入口から出口まで歩けば、 一通りものがそろう。 同時に、 買い物の情感までも楽しめる。 

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