【023】 釣 り 人
 釣り人の談義は面白い。 
  立ち止まったウオーキングする住民が、 何が釣れるのかと聞く。 うなぎを狙っていると教える。 とたんに、 過去の自慢の成果が語られる。
   きょうは獲物が何一つない。 バケツは空だし、 申し訳ていどに水が入れられている。 うなぎは利口らしい。   成果がないのは、 東京湾から川に上がってくる潮が良くないからだの、 護岸補強の工事の影響だのと、 言い訳もかなり上手だ。 
  足を止めた以上は下町の情で、 しっかり耳を貸している。 
  天然のうなぎは一匹3000円になるという。 それも釣れたらの話しだ。 ひとりが頃合いを見て、 立ち去る。 また誰かしらが立ち止まる。
   きょう獲物が取れない講釈が繰り返される。 釣り人は時おりリールを巻き、 竿を上げてみせる。 むろん、 うなぎは上手に逃げている。 

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