【010】 ま つ り
 まつりといえば、 幼いごろの故郷の社が思い出される。 昭和40年代からの高度成長期には、 まつりは下火になった。 
神輿(みこし)の担ぎ手がいないことが理由だ。 
 日本全体が猛烈に経済一辺倒になった。 勤め人がまつりの行事に参加できなくなってしまった。 同時に、 地域との連帯感がなくなった。 消えていったまつりは多い。 
 東京下町では、 有志が細々と伝統的なまつりを残してきた。 
 平成時代になってから、 各地でまつりが復活してきた。 
 明治時代の廃仏毀釈でも、 神社の被害がなかったのだから、 伝統的な由緒ある神輿をもつところが多い。 神輿さえあれば、 まつりの復活には、 そう手間がかからなかった。 近頃は、 若者が法被を着て、 金張りの派手なみこしを担ぐ光景をよく見かける。 法被が格好よく映るのだろう、 祭りを求める小集団が電車で四方の神社に出向く。 そんな光景も多くなってきた。 

 太鼓をたたく20代、 30代のグループが各地で誕生してきた。 神社の境内の櫓のうえで、 女性が両手で撥をたたく。 これらは見ごたえがある。 

 男尊女卑の時代は、 神社の櫓のうえに女性が上ることはご法度だった。 しかし、 一度は衰退したまつりだ。 復活にそんな条件を持ち出せば、 そっぽを向かれてしまう。 男のみ女のみ行事はとかく衰退する。 この世の常。 

 男が女の目を意識し、 女が男の目を意識する。 それが人間の性だから。 男尊を撤廃してしかるべきだ。 神社側はもはや暗黙の了解、 まつりの継続に傾注しているのだろう。 
 きょうも、 秋祭りで、 女性が太鼓をたたく。 

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