【090】 下町の外国人さん

  ヨーロッパ系の人が、 怒っていたことがある。 日本人は『外国人』といえば、 アメリカ人だと決めつけている。 日本人は身近なアジアなど頭に描かず、 視野のなかにない。 世界はひとつにしても、 アメリカ一辺倒では、 日本人の意識の底は浅過ぎる。 淋しい限りだ。 
  下町の商店街にも、 住宅地にも東南アジア、 中国、 韓国のひとが増えてきた。 国際色豊かな多彩な肌が日常のなかでも、 ごく自然に見られる。
 

  外国人の彼女たちがウインドー・ショッピングしている。 陳列されたバッグ、 宝石、 アクセサリーなどを凝視している。 彼女たちの目はガラス越しに光っている。 
  彼女たちの背中には異国の情感がある。 
  人間はだれしも、 故郷を想う。 親を想う。 友を想う。 ふたりは遠く祖国の親やきょうだいの顔を思い浮かべ、 「どれが喜ばれるのかしら」と思慮しているに違いない。 贈り物選びは心が母国とつながっている瞬間だ。
 

  下町には国境がない。 世界は一つ。 アジア系のひとにも親切だ。 肌に関係なく、 手を取り合って生きていける、 心を結び合える、 それが東京下町だ。
 

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