【020】 夕 日
  晩秋の空の下で、夕日が西に傾いた。 浮雲の一つひとつが、茜色の濃淡で、個性豊かな表情をつくる。 川向こうの町並みが奥行きをなくした、シルエットを作りはじめた。 

手前の川面には、燃える落日の帯が縦長できらめく。 此岸まで近寄る。 護岸道路を行きかう通行人の顔が、夕日で赤く染まる。 

  太陽が落ちるほどに燃え盛り、多彩な雲はなおさら華やに輝き、錦絵の空になる。 紫色、藤色、白っぽい青と微妙な背景の変化をみせる。 神秘な色合い、尊厳な世界だ。

  夕日が対岸のかなたに沈んでしまった。 空はなおも燃えているが、川面は暮色で濃くなる。 

  川船のタンカーが上ってきた。 喫水線と甲板がおなじ高さに思える。 重たげな速度だ。 船脚の波が角度よく三角形で拡がっていく。 船脚は鈍いが、蛇行する河川の上流へと消えていった。 

  夕暮れの情景はさらに沈み、影と灯火の世界へと呑み込まれていった。 

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